プロフィール

ユーリー・バンダジェフスキー

 

1957年1月9日にベラルーシ生まれ。
1980年、国立フロドナ医科大学を卒業、病理解剖の専門家となる。
1990年、ゴメリ(Gomel)医科大学を創設、初代学長・病理学部長を務める 
ゴメリ医科大学では1986年のチェルノブイリ原発事故以来、セシウム137の人体への影響を明らかにするために、被曝して死亡した患者の病理解剖と臓器別の放射線測定や、放射能汚染地域住民の大規模な健康調査、汚染食料を用いた動物飼育実験、などの研究に取り組む


1999年ベラルーシ政府当局に逮捕・拘留された。この裁判は政治的意図による冤罪だとして、海外の多くの人権保護団体がベラルーシ政府に抗議。アムネスティ・インターナショナルは、「バンダジェフスキー博士の有罪判決は、博士のチェルノブイリ原発事故における医学研究と、被曝したゴメリ住民への対応に対するベラルーシ政府への批判に関連していると広く信じられている。」と発表。

実際にバンダジェフスキーの逮捕は彼がセシウムの医学的影響に関する研究論文を発表した直後に行われ、WHOがキエフで開催したチェルノブイリ原発事故による人体への影響に関する国際シンポジウムへの出席も不可能となった。

ベラルーシ政府は『(チェルノブイリ原発 事故による )放射線は人体の健康にほとんど影響しない』という見解を現在でも堅持し、バンダジェフスキーが逮捕された1999年に原発事故以来人々が避難していた汚染地への再入植を施政方針とした。


バンダジェフスキーの投獄に対する国際世論の高まりに押される形で、刑期途中の2005年8月5日に釈放され、ベラルーシを国外追放となり、ウクライナ・キエフ州で活動を続けている。業績 小児の臓器におけるセシウム137の長期的な取り込み(チェルノブイリ原発事故被曝の病理学的検討) バンダジェフスキーは突然死を含む被曝小児患者の病理解剖を行い、セシウム137の体内分布を調査した。

心臓をはじめとして、腎臓、肝臓、甲状腺・胸腺・副腎などの内分泌臓器に高いセシウム137の集積と組織障害が認められた(内部被曝線量の全身平均の約10倍)。再生能力が高い骨格筋細胞と違い、心筋細胞はほとんど分裂しないためにセシウム137が過剰に蓄積しやすく、心筋障害や不整脈などの心臓疾患が惹起されやすいと考察している。

さらに、セシウムにより人間や動物の体内に引き起こされる病理学的変化を『長寿命放射性元素体内取り込み症候群=Syndrome of long-living incorporated radioisotopes(SLIR)』と命名した。SLIRは生体に放射性セシウムが取り込まれた場合に生じ、その程度は取り込まれたセシウムの量と時間で決まる。

 

そして、その症候群は心臓血管系・神経系・内分泌系・免疫系・生殖系・消化器系・尿排泄系・肝臓系における組織的・機能的変異によって規定される。SLIRを惹起する放射性セシウムの量は年齢、性別、臓器の機能的状態により異なる。

小児の臓器と臓器系統では、50Bq/kg以上の取りこみによって著しい病理学的変化が起きる。10Bq/kg程度の蓄積でも、特に心筋における代謝異常が起きる。

ゴメリ州に住む小児のうち、体内放射性元素濃度が11 - 26Bq/kgの者は心電図異常の発生率の割合が6割に達し、37 - 74Bq/kgの蓄積の者では9割に至る。

1997年に死亡したベラルーシの小児の心臓からは平均600Bq/kg以上、成人からは平均100Bq/kg以上のセシウムが検出された。

例えば突然死した43歳の心臓ではセシウム137が45.4Bq/kg検出され、びまん性(広範な)心筋細胞融解、筋線維間浮腫、著明な筋線維断裂が認められた。

 

『放射性セシウムが生殖系に与える医学的社会学的影響: チェルノブイリ原発事故 その人口「損失」の現実 』

ユーリ・I・バンダジェフスキー (著), N・F・ドウボバヤ (著), 
久保田 護 (翻訳) 
合同出版 (2013/4/15) 

放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ』
ユーリ・I・バンダジェフスキー (著), 
久保田 護 (翻訳) 
合同出版 (2011/12/13)